海の光

静岡県

撮影|仲佐猛

設計|榎本弘之

Architect's comment

絶景へと向かう、究極の拡がり。

熱海は新幹線で品川から最短31分、その駅からたった10分で大海原に開けた別天地:海光町に出ます。しっとりした石畳の小径と小京都のような静かな佇まいの一角は、明治時代に政治家や大実業家が別荘を連ねた由緒ある地。ここに最高のリゾートを求めて保養所を計画しました。

道路側には敷地一杯に壁を建てて、海への眺めを一旦シャットします。重い扉を開けるとガラスの階段、それを一歩一歩上がるごとに視界は開け、ラウンジからデッキへ、プールへ、そして太平洋への圧倒的な眺望のなかに投げ出されます。

ラウンジとデッキは純白のタイルで揃え、遙かなる拡がりを強調します。両者を仕切る幅7mのガラスは電動で静かに上昇し、内外は完全に一体化します。その先は10mを超える崖下。とはいえ手摺を付けては眺望は台無しです。そこでデッキ先端はインフィニティ・プールとしました。視覚は遮らずに崖へは落ちない仕掛けです。ラウンジ・デッキ・プールが全体の中心となり、最高の開放感を求めた核となります。しかしそれだけでは落ち着きません。核の両側には緩やかに囲われた安らぎのためのダイニングと暖炉コーナーを配し、中心との対比の中で、豊かな生活を目指しました。

ラウンジの純白タイルはそのままの幅でデッキへと延び、その先には手摺をなくすためのインフィニティ・プールが光る海へとつながります。ラウンジとデッキを仕切る窓は幅7m。邪魔なサッシュ方立は中間には設けず、ガラス厚の半分の径のステンレス丸鋼を突付ガラスのコーキングの中に埋め、殆ど一枚ガラスかのように見せています。

丸いジャクージとプールで先端を縁取られたデッキは、大きく海に拡がって、この上ない開放感を得られます。床の丸穴は、階下に光を落とすトップライトです。

床の600角タイルの角にはLEDを埋込み、それが電動窓に反射して光の格子が海へと拡がります。また、伸びやかさを追求したラウンジとは逆に、暖炉を囲む暖炉コーナーが、安らかな寛ぎの時間を生み出します。

ラウンジ+デッキが中心になって、その左右にダイニングと暖炉コーナーを配しているのがわかると思います。

プールは敷地形状に沿って斜めに伸ばし、先端には丸穴を空けました。潜って泳いだらきっと楽しいだろうとわくわくしながら考えたデザインです。

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