神戸北の平家
兵庫県神戸市
設計|藤原慎太郎
Architect's comment
解放感のある大きな空間と、ニッチやちょっとした段差などで思い思いにくつろげる小さな空間という相反した2つの空間がお施主様の希望でした。一方でお施主様の奥様は体が不自由なため電動車いすをご使用されており、そういった方でも不自由なく過ごしていただけるよう、そこかしこで居住者の気配が感じられるような抜けのある空間の提案も必要でした。そこで、小さな空間と大きな空間があいまいな境界で分節されながら連続し、小さな空間としても大きな空間としても過ごせる空間を実現できないかと考えました。
これを実現するには、空間を居室や廊下といった具象的に把握できる形ではなく、あいまいな分節によって居場所にも動線にも捉えられるような領域の集合で構成することが望ましいと考えました。
そこで、この住宅では、大屋根、大壁でざっくりと空間を分節し、その空間をガラス屋根や木造屋根、ガラス壁、木造壁、建具、ガビヨンなどのエンクロージャーで光や音、空気、動線、視線の透過と遮断をコントロールすることで居住する領域として成立させています。
エンクロージャーは屋外からの視線を遮ながら、屋内からの視線の抜けを確保し、居室のどこからでも大屋根の下にいることが感じられるように設計することで、大屋根の下の一つながりの大きな領域の中にいる安心感を感じられるようにしています。
一方、大屋根はコンクリートの大壁の上に無垢の鉄柱で持ち上げて支持することで、大屋根と大壁の間から見える空が室内にいながらも解放感を与えてくれるようにしています。
空間の具象性を抑えるため各要素はできるだけ抽象的な形状にしています。
一方、これにより各要素の素材感がより強く感じられるようになります。
そこで、この住宅では各要素を構成するコンクリートや、鉄、ステンレス、木、合板、ガラス、石といった素材そのものを仕上げとして用いています。これにより、空間の抽象性と素材の具象性が互いを引き立たせ、静かでありながら情感豊かな空間となっています。
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