千早の家

東京都豊島区

撮影|小川重雄

設計|庄司寛

Architect's comment

都心の街並みに挿入された“北の庭”

本建築は親夫婦とその子供夫婦+2人の孫 6人家族のための二世帯住宅である。計画地は東京都豊島区…千川駅から徒歩5分ほどの利便性の高い場所にあり、閑静な優良住宅街の一画に位置する50坪ほどの矩形の土地であった。敷地は東側の幅4.5mの道路に接する平坦な地型で、東側の道路の先には桜の古木や針葉樹が植わる幅8mほどの公園空間(千川親水公園)が広がっている。

計画では、その親緑空間に面するという都心では得難い特徴的なコンテクストを踏まえ、その住環境の持つポテンシャルを最大限に引き出すような建築を提案したいと考えた。

この住宅では、あえて北側にこの家の庭としてのオープンエリアをプログラムし、直射光に頼らない柔らかい光に包まれる住環境を提案している。そのことによって、都心における南庭が並ぶ画一的な都市の街並みに一石を投じ,以って北側隣地の南側オープンスペースと呼応させることで、この住宅にとってもより広がりのある優良な環境を創り上げようと意図したものである。

この建物は、特徴的な3角屋根形状の2階の建築ヴォリュームが,最大4mの長さでキャンティレバー状に東側の公園方向に跳ね出すという象徴的な構造フレームを呈している。3角形の屋根を構成する傾めの壁は、眼前に広がる公園の風景を切り取る額縁的存在となり、木々の緑をより鮮明に室内へと導き入れる。

傾斜壁に包まれた住空間では四季折々に移ろい往く公園の自然の美しさを体感することができ、その3角屋根の形状は特徴的な北側の庭へ南光を導くことにも寄与している。またこの住宅では,外装材に型枠同時打ち込みタイプのFRC断熱パネルを採用し、外部型枠のコストを削減することによって高効率のRC外断熱を実現させている。

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