2×r21富士宮の家

静岡県富士宮市 施工|ASJ三島スタジオ[株式会社池田工務店]  撮影|小川重雄

設計|庄司寛/庄司寛建築設計事務所

Architect's comment

2×r21 ……半径21mのふたつの円弧。

ご夫婦と3人の子供たちのための住宅である。コンクリート打ち放しにこだわりをもつご主人の要望から、基本構造フレームはRC造とし、コンクリートとガラスの素材感を生かした象徴的な建築デザインを目指すこととなった。

計画地は静岡県富士宮市。JR富士宮駅から富士山方向に車で15 分ほどの場所にあり、駿河湾へとなだらかに下っていく富士山南山麓の傾斜地にある。敷地形状は緩やかにカーブする幅員4 mの道路を南側に抱えた異形三角形の地型で、北側にはクライアントのご両親が居住する母屋や倉庫などが点在するロケーションであった。

敷地からは間近に雄大な富士山を望み、駿河湾方向には遠く周辺の山々も垣間見ることができる。

計画では、母屋との関係性を重視しながら、コンクリートとガラスによるシャープな造形と共に、雄大な富士山に抱かれたこの土地のおおらかな風土に融合した鷹揚な佇まいを持つ建築を提案したいと考えた。

この三角形の敷地上に半径21mの交差するふたつの円弧をプロットし、その円の中心を結ぶ軸線上に円弧を跨ぐように台形平面+門型立面の住宅ヴォリュームをプログラムする。このふたつの円弧が重なり、その円弧上に建てられた湾曲するコンクリート壁で囲まれたエリアは、シンボルツリー(イロハモミジ)が植えられた前庭や裏庭と共に家族のための空間を内包し、プライバシーが保たれた安定した居住性をこの住宅にもたらしている。またこの象徴的なコンクリート壁は、ガラスの素材感が際立つ門型の住宅ヴォリュームと一体となって、この建築の印象的な造形を創り上げる。

来訪者はプライベートエリアを守る円弧状の壁に沿って奥へ導かれ、高さ5mの扉を介して正面間近に雄大な富士山を望む玄関空間に入る。玄関ホールには表・裏の玄関を設けることで母屋へと通じる動線を確保し、その関係性を確立させた。

この象徴的なふたつの円弧が創り上げるデザインコンセプトが、敷地の持つ最大のコンテクストである雄大な風景と呼応し融合することで、この住宅にこの上ないおおらかな居心地の良さをもたらすと考えている。

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