青葉町の家

三重県 施工|ASJ松阪・四日市スタジオ  撮影|冨田英次

設計 | 吉川弥志/吉川弥志設計工房

Architect's comment

静穏と開放性を内包する住宅。

三重県北部桑名市の中心部より西、なだらかな丘を上った場所に建つ住宅。その場所は周囲に対して高低差があり眺望も良く、遠くは名古屋の高層ビル群まで望むことができる。

クライアントからの要望は少なく、車2台の駐車と家族3人が安心して暮らせることであった。日本と海外を行き来するクライアントが安らげるように、プライベートスペースは周囲からの視線を避けた専用コートを設けて落ち着きを高め、眺望の良い2階はオープンなパブリックスペースとした。

桑名市は比較的温暖な気候ではあるが、夏場は特に蒸し暑くなるため空調に頼りがちになる。そのため、空調ばかりに頼りすぎない環境型住宅として快適に暮らせることも目的とした。南の日差しに対し水平に張り出した庄や西日を遮る壁は、日射熱を効果的に遮ると同時に外観をデザインするための重要なファクターとして扱い、日常は最小限の設備で暮らすことを可能としている。

プライバシーを高めた個室に対し、開放的なリビングルーム。海外からのゲストも想定したおもてなしの茶室や眺望を楽しむテラスは、日々の暮らしだけでなくそれ以上に豊かな暮らしを得ることができる。大きな住宅では長くなりがちな動線に対し、コンパクトな移動を可能とするようにエレベーターを中央に配置。一方で住宅のヴォリュームを感じられるように玄関から20mの長い廊下を設けている。廊下が単調な移動になることを避け、空間の期待感を高めることができるように、その先の階段ホールは2階からの光が降り注ぐ、広がりのあるスペースとした。

住宅のヴォリュームに圧迫感を受けないよう、庭や格子による視線の抜けなど余白の領域をつくり、壁の構成に奥行きと陰影をつけている。さらに、敷地角の空地は車や通行する人々の視界を遮らないよう配慮すると共に、植栽を設けることで人々へ季節感や安心感を与えている。

静穏と開放性の両方を内包したこの住宅 は、心地よい風を感じ、葉擦れの音に耳をかたむけ、落ち着きをもたらすことができている。

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